第4回 ユビキタスインタフェース&アプリケーション
専門研究会 (SIGUBI)開催報告

Takeshi Sakurada
Tokyo University of Agriculture and Technology
takes[atmark]hands.ei.tuat.ac.jp

1.はじめに

 第4回ユビキタスインタフェース&アプリケーション専門研究会(SIGUBI)が開催されましたのでその模様について報告する。

2.開催概要

 開催日時と場所、および参加人数、発表プログラムは次の通りです。

日時: 2004年 1月19日(月) 13:00〜17:10
場所: 東京農工大学工学部 11号館 多目的会議室
参加者: 24名

発表プログラム

  1. 開催挨拶
    中川正樹(農工大)
  2. 発表「吸い取りインタフェース:携帯機器による掲示板からの情報取得インタフェース」
    ○加藤直樹(農工大)
  3. 発表「タブレットPCを活用した手書き電子教材の実践検証〜IT活用教育プロジェクトの紹介〜」
    ○田中 宏、岩山尚美、田村弘昭、秋山勝彦、石垣一司(富士通研)
  4. 発表「オンライン重ね書き文字入力インターフェース」
    ○登内洋次郎(東芝)
  5. 発表「携帯情報端末における手書き文字入力枠の最適値−枠の大きさ及び形状による検討−」
    ○加藤泰史,任 向実(高知工科大)
  6. 発表「Lab TestingとField Studyに基づいたメモ作成システムのデザイン」
    ○植田 竜介,任 向実(高知工科大)
  7. 発表「手書き枠無し文字列認識自由化の推進」
    ○小沼元輝,中川正樹(農工大)

3.研究会の模様

fig.1 研究会の模様
 

 研究会の最初の農工大中川氏の挨拶の中では、日本油脂の書き味向上フィルム(*1)などについて触れ、ペンを利用する環境がますますよくなりつつある現状について述べた。
 最初の発表は「吸い取りインタフェース」についての発表で農工大の加藤氏が行った。この発表では、掲示板や電子白板にPDAを近づけることで、その場所付近に掲示されている内容を、吸い取るようにPDA内に取り込むシステムについて述べられていた。仕組みとしては、電子白板の場合は、デジタルボード(富士通コンポーネント製)を使うことで、電子白板触れた物の大きさを判断できるため、その触れたものが小さければ、通常の電子ペンの操作、大きければPDAが接触したと判断し、その位置を検出し、その内容をPDAに無線LAN等で送るというものである。また、逆にPDAからデータを送信し、デジタルボード上に表示もできる。掲示板の場合の位置検出にはRFIDが使用されている。掲示する紙を作成する際に、内容を電子ペンあるいはスキャナを使ってで取り込んでおきサーバに格納しておき、RFIDタグ内のIDと結びつけておく。そのRFIDタグは画鋲に取り付けられ、その画鋲を使って掲示する紙を張るというものである。PDAを使って掲示の内容を読み出す際には、その画鋲に取り付けられたRFIDタグの中のIDを読み出し、サーバから掲示の内容を取り出すというものである。 質疑応答ではRFIDタグの読み取り範囲の問題などについて議論がなされていた。
 続いて「IT活用教育プロジェクトの紹介」が富士通研の田中氏からおこなわれた。 小学校において行われたタブレットPCを用いた実証実験を行った際に作成した手書き電子教材を実際にを使用しながら、文字認識コンポーネントを利用した100マス計算や筆算ドリル、漢字学習の事例などを紹介した。タブレットPCの画面に定規をあてて使用するなど、実証実験時にみられた面白い事例、書き味向上フィルムの使用によりペンがあまり滑りすぎることはなく入力がし易くなったことなども紹介された。質疑応答では、自動採点結果が間違った場合の扱いについて質問が出た。自動採点は機械が自動的に行っているので、完璧な結果は出ない時があると生徒に説明をあらかじめしていたため、生徒はさほど気にしていない様子で電子教材を使用しているなどの報告がされた。また電子教材だけではなく、印刷ができるなど、紙でプリント資料を残すのは必要かもしれない などの議論がなされた。紙のプリントなどは、子供の学習度合いを親が知る一つの手がかりであるという意見も出た。今後はいかに実際の教育現場で、教師が簡単にその授業にあった電子教材をつくることができるかが課題である。
 発表3番目は、「オンライン重ね書き文字入力インターフェース 」について東芝の登内氏が発表を行った。最初に東芝の最新のタブレットPCに搭載されている、枠なし認識、重ね書き認識について簡単な概要の説明があった。この2つの認識エンジンは東芝独自の文字認識である。今回の発表では、2番目の重ね書き文字入力のインタフェースについて説明があった。一つの枠にひらがなを重ね書きしていくことで文字を入力していくインタフェースで、漢字等の入力はかな漢字変換をジェスチャー入力を用いて起動し入力する。入力ストローク1画ごとに最新の認識結果に更新し、1画前を残してそれより前のストロークはすっと消えるようになっといる。かな入力にすることで、レスポンス性と確実性を求めることができるなど説明が行われた。ストロークの位置情報だけでもかなの入力だけであれば、多くは認識可能であるという点が参加者の興味を引いていた。このあとの休憩では、実際に多くの参加者がこの重ね書き文字入力インタフェースを試し、意見交換がなされた。
 次の発表では、「携帯情報端末の手書き文字入力枠の大きさ」について高知工科大の加藤氏
が発表を行った。今回はPDA上での手書き文字入力枠の大きさとその縦横比率を変えた実験とその検討結果についての発表であった。質疑応答では、PDAに限らずタブレットPCや大型の機器などでも実験して比較してみたらどうか、紙との文字入力枠サイズ比較や、実際にPDAを使いそうな環境、たとえば揺れる電車の中で立って実験したらどうかなど、様々な提案がなされた。
 手書きメモ・プレゼンテーションソフトウェア「スケッチポイント」についての説明と、Lab TestingとField Studyを行った評価について高知工科大の植田氏から発表が行われた。質疑応答では、ソフトウェア自体か評価手法のどちらかに的を絞って研究を進めてみたらどうかなどの厳しい意見も述べられた。
 最後の発表は「オンライン枠無し方向自由手書き文字認識技術」について農工大の小沼氏から発表が行われた。文字の筆記方向や傾きに制限を受けない枠無し文字認識エンジンについて実際にデモンストレーションを行いながら発表が行われた。質疑応答では、文字認識エンジンの仕組みについて活発な議論がなされた。
 すべての発表が終了した後、会場を移し農工大中川研究室の研究成果の説明とデモンストレーションが行われ、活発な意見交換がなされた。

4.おわりに

 今回の研究会は、タブレットPC上で動くアプリケーションに関する発表が多いのが特徴であった。かな入力に専念することで確実性を狙う発想や、RFIDの利用法を考えた発表など新しい方向性を垣間見ることができるものでった。以前発表のあったテーマなども、進展がみられており、今後の研究成果に期待したいところである。


*1 参考URL: http://penfit.nof.co.jp/